ミクロマン・マグネパワーズマッドネス 「ロボットマン、最終の後」
今回はミクロマン・マグネパワーズの初期フラグシップアイテム、マグネロボットマンについて、いろいろと書いてみたい。
と、マグネロボットマンについて書くその前に、どうしても昭和の元祖ロボットマンについて触れておかねばイケナイんですよ奥さん。
ロボットマン(復刻版)。右はネオ変身サイボーグね
子供の頃、まず何にヤラれたってその名前ですよ。「ロボット」ときて、「マン」です。
安易と笑われるだろうか。
いやいや、子供の大好きな「ロボット」に「マン」が付いてんですから、もうこりゃ究極にして完璧!青赤白のカラーリングもガンダムより全然先ですぜ?
オモチャには複雑な電動機構が搭載されており、各部が回るわノシノシ歩くわ、三機の単体ビークルに分割されるわ、追加パーツの換装でドリルタンクやドーザーに変形するわと、呆れる程遊べる超傑作玩具で、当時の子供たちのアコガレの的でありました。
また、昭和のテレマガ版コミックス、「ミクロマン」でも、ロボットマンは主人公の片貝あきら君が操縦する、事実上の主役機。
あきら君のロボットマン愛は凄まじく、後にパワーアップした新型機、「ロボットマシーンZ」が登場しても、(オモチャ宣伝マンガの主人公のくせに)ロボットマンからマシーンZへの乗換えを拒否した程です。
当時の玩具には変身サイボーグのパーツと合体させるための部品も付属。サイボーグとミクロマンの世界を融合させる、昭和「ビクトリー計画」の中核を為す、タカラ的にも超重要な商品でした。
当時を知るミクロマンファンにとって、また、タカラ自身にとって、ロボットマンってのは特別中の特別な存在なんですね。
で、平成になって復活したマグネパワーズでも、新しくロボットマンが登場!
右より、エース、バロン、クロス。名前はアルファベット順にABCです。
各部間接が旧タカラマグネモ11規格のマグネットジョイントになっており、様々なパーツと組み換えができます。
ボディはマッスルなスタイルで、色はエヴァ風。顔は「ロボットマン」というだけあってか、三体とも平成ウルトラマン風にプラスして、眉間とアゴが張り出した、90年代スーパーロボットのトレンドが取り入れられています。
「ロボット」要素よりも「マン」要素が強く感じられますな。胸の大きな擬似鉄球も、なんかビーダマンを思わされます。
でもですね、正直当時一部ファンからの評判はあんまし芳しくありませんでした。まぁなんと申しますか、旧ファンとしてはですね、「ちょっと認め難いもの」がありました。これ、マグネロボかもしれんけど、ロボットマンでは無いよね。というカンジです。
他のアイテムとはガンガン絡むのに、ミクロマンとだけは絡まない。ミクロマンが載れて、そして想像の中では、自分たちも載っている。そーいうのがロボットマンなのです。この辺の違和感、顧客の期待とのズレは、タカラとしてもよく判ってたハズです。
メディアでの扱いもハッキリ言ってヒドく、アニメでは忘れた頃に登場し、出たと思ったら即凍結。その後は消息不明という、ビックリするほどの空気感でした。
アクロイヤーにもロボットマンが存在します。
左より、ヘルピオン、バンパイザー、イグナイト
この三体のアクロモンスターが合体して、アクロボットマンとなります。
アクロボットマン・ヘルバイザー(右)
アクロボットマンは二体の合体で、三体のうち一体は丸ごと余ります。
なんとアクロボットマンは、ナマイキにもアクロイヤーを搭乗させる事が出来ます。
余剰無しで三体合体させる事も、一応可能です。
カッコいいし大迫力なんだけど、保持が弱いので手に持って遊ぶのは不可能!
個人的にはすごい好きなんですけど、当時セールス的にはこれも非常にキビしく、かなり余ってました…
そしてマグネパワーズ後期の「スーパーミクロマン」時期になると、「わかってるって。こういうのが欲しかったんだろ?」と言わんばかりの、決定版とも言える新ロボットマンが投入されます。
ロボットマン・ディーン(右)、ロボットマン・エンデバー(左)。頭文字はD、Eです。
五体のマシーンが合体してロボットに。マグネットジョイントの他に5ミリジョイントも各部に設けられ、さらに拡張性がアップ!
昭和のミクロロボットⅤをモチーフにしたと言われるディーン、ミクロロボットⅦをモチーフにしたと言われるエンデバーと、どちらもロボとしてのカッコよさはシビれる程。今でもこの二体を、ロボット玩具の最高傑作と評する人も、少なくありません。
今度はもちろんミクロマンが搭乗可能!ハッチの展開も凝っていて、燃える事この上無し!
全身に「これでもか!」とばかりに、詰め込まれたギミック!
限界です!耐え切れません!悲鳴を上げるマグネットジョイント!
ディーンはディーンジェット、ディーンブラスター、ディーンキャノン、ディーンバイク、ディーンスピーダーに分離。
乗り物と接地式砲台に分離する所や、外したパーツがミクロマンの強化武器になるところなどが、昭和ミクロロボットとの共通点です。
エンデバーはエンデバーモービル、エンデバーバズーカ、エンデバークレーン、エンデバータンク、エンデバードーザーに分離。
実は「エンデバー」って名前は、マーベルコミックス版マイクロノーツにおける、主人公達が乗る宇宙船の名前でもあります。
ヒーローロボットのガチであるディーンに対し、工作機械や建機モチーフ色の強いエンデバー。どちらも今でも高い人気のある玩具です。
傑作の誉れも高いDEに比べて、ABCはけっこう残念評価というか、注目される機会も少ないんですけど、実はABCもドあきれた大発狂玩具だったってあたりを、今回は取り上げようと思います。
付属の武器パーツを各所に装備。
武器パーツにはマグネット鉄球の可動の他にも可動箇所が設けてあり、かなり良く動きます。ワンサカ付けると重さでヘタるのはまぁ、しょうがないですかね。
ビークルに変形するロボット型ミクロマン、チェンジトルーパーズ。
CTはロボットマンの武器として合体可能です。
ゼンマイン、マグネタイタンズ
マグネアニマルズ。
ジャガー(黒)とクーガー(青)は二個セットで定価2,200円なんですが、バロン(黒)とクロス(青)用に両足を同じ色で揃えようとすると、さらにもう一セットを買わないといけないってんですから、つくづく恐ろしいシリーズです。
ミクロマンマシン、スパイヘリ、ビートローダー。
カップ麺や缶ジュースに隠された、ミクロマン用のビークル。カップや缶はビークルとも連結でき、展開すると簡易的な基地になります。、ミクロマンも付属し、本体にはミクロマンの手持ち武器にもなるパーツが含まれているので、これ一つ買うと人形、乗り物、基地、追加装備が全て揃うという、とんでもないコスパを誇る大傑作玩具です。
さらにロボットマンとも合体できてしまいます。
かっこえぇ~!ミクロマンマシンは本当に傑作!
と、こんな風に、マグネパワーズで出た玩具とは、アクロイヤー玩具も含めてほぼ全てと絡みます。アイテムが揃えば揃うほど加速度的に凄さが増してゆくのが、ABCなのです。
ABCは「最新ロボットマン」として理解しようとすると「?」ですが、「最新マグネロボット」として考えると、過去のタカラマグネモ玩具の集大成として、異常な程のコダワリが詰め込まれている事がわかります。
マグネモ11 マグネロボット「鋼鉄ジーグ」復刻版(左)
司馬遷次郎博士の顔で毎回吹く。
マグネモ鋼鉄ジーグは、マグネパワーズが展開される直前、98年の年末に復刻されました。
マグネモシリーズって傑作玩具だし、欲しい人はたくさんいたんだけど、正直、98年頃のジーグの知名度は高いとは言えませんでしたし、スパロボに登場して注目度が上がってたとか、アニメがリメイクされて旧玩具にも脚光が当たってた…とかいう時期でもなく、「なぜに今ジーグ?」というタイミングでの復刻でもあったわけです。
しかも、ジーグ復刻以前って、マグネモ玩具を作る工場のラインが無いので、復刻に当たっては、莫大な投資が必要だったんですよね。
※記憶がうろ覚えで申し訳ありませんが、昔日経新聞で、「タカラは磁石を使用した玩具の製作ラインを作るために、10億円規模の設備投資を行った」という記事を見たように思います。これはホントに怪しい記憶の不確実な話。
そこまでして、何で「マグネモ」を復刻する必要があったんでしょうか。ここを深読みをすると、当時のタカラの遠大な戦略が透けて見えます。
私は前々から、「90年代末のタカラは、海外でマイクロノーツ玩具を出す事を計画してたんじゃないか」と書いてるわけですが、この時点でタカラがマグネモ鋼鉄ジーグを復刻したって事は、この時のタカラはマイクロノーツのフォースコマンダーやバロンカーザの復刻版も、簡単に作る事が出来た状態だったわけですよ。
もしかすると、タカラは「新マイクロノーツ玩具」(マグネロボットマンやチェンジトルーパーズ等)と、旧マイクロノーツ玩具の復刻(ジーグ海外バリアント)を平行して展開させる、世界戦略のために、マグネットシステムの製造ラインを復活させたのかもしれません。
まぁそれはともかく、めでたくジーグとパーンサロイドが復刻となり、マグネパワーズでマグネモ規格が旧玩具と完全互換で新展開されたおかげで、旧マグネモ玩具にも脚光が当たり、完全現役玩具として復活する事が出来ました。
そして、マグネロボットマンABCは、それぞれが旧マグネモ玩具をモチーフとして作られていると思われます。
CGビーストがセカンドになった時の衝撃は、なんか昔も一度こんなコトあったな。という気がした。よく考えたらバラタック観た時だった。
エースは、顔がジーグで、色がバラタック。
バロンは、名前こそマイクロノーツの「バロンカーザ」ですが、黒+緑+金の配色や頭の形状など、マイクロノーツの「エンペラー」により近いです。
クロスは、色は「ガ・キーン」ですが、顔と名前はマシンザウラーの「銀河帝王デスクロス」。
一つのアイテムに複数の記号をブチ込む手法は、マグネパワーズではおなじみ(?)なんですが、ABCにもキッチリ2つずつ、旧作マグネ玩具の記号が盛り込まれてて、非常に怖くなります。
そして、マグネパワーズのアイテムを全部集めると、過去のマグネロボの代表的な強化、旧玩具では実現できなかった装備が、ほぼ再現できてしまいます。
エースでの、ジーグを補完するような強化。
当時はマグネモ8のみだった、ジーグの各種強化形態も、見立てで再現。
アースジーグはコミックロボ・メカドンみたいになってしまいましたな(汗)せっかくなのでマグネロボットマン・メカドンも組んでみました。
昭和メカドンの胴体パーツって、ロボットマンの流用だったりしますな。
これらのマグパパーツは、当時品のマグネモ玩具に装備させる事も可能なわけです。
ビッグシューター風より速い!
風より速くてもそう自慢にはならんと思われ。
マグネパワーズを集めると、過去の玩具もバリバリ現役で遊べるわけですよ。超磁力システムの看板は、実はこのために用意されてたんじゃないかと思うほどです。
バラタック風装備も充実しています。
クランカーハッグまで再現可能だなんて、本当にアキれます。
捏造ロボットマン・バラタック
メディアでのABCは、自我や個性を持った生命体でも、乗り込み操縦型のロボットでも無く、立ち位置が中途半端でメディアでは目立ちようもありませんでしたが、「バラタック式」の、子供たちが遠隔操作する運用なら、もっと活躍が出来たんじゃないかなぁ。と思うんですよね。
バロンカーザ・エンペラーにももちろんあった、昭和玩具定番の両手ロケットパンチ。
これね、パンチはきちんと左右分が二個付属するんですけど、発射パーツは一個しか付属しないので、両手に装備させるには、バロンを二個買いしなくちゃいけないんですよ。
一体の定価が3,500円で、エース、バロン、クロスと、三色を買い揃えるだけでも相当な冒険なんですが、その上同じ色をもう一体買わせようってんだから、恐ろしいシリーズです。
バロンがバロンカーザモチーフって話ですが、ボンボン連載のコミック版では、アクロイヤーに乗っ取られてミクロマンと戦う。なんて話があったそうです(単行本未収録)。
やっぱどう考えてもマイクロノーツです。
クロスはガ・キーン(スィート・クロス!)だ。と、私は以前から言ってましたが、デスクロス(レッドファルコン)の記号も含まれています。
ネギ坊主ヘッド+トリ。
ガ・キーン要素ももちろんありますよ!
チェンジトルーパーズとの合体で、ガ・キーンのプライザー、マイティーとの合体を再現!
昭和玩具のプライザーとマイティーは、ガ・キーンの腕を外して胴体に直接付けなきゃいけないという、アニメとは違う形での合体でしたが、マグネロボットマン・ガ・キーンはカンペキ再現です!
ガ・キーン、フルパワー!!
大車輪アタックまで、抜かりなく再現可能。
ジャイアントアクロイヤーの「コマ」。このパーツ、説明書では堂々と「大車輪」と書かれています。
商品そのままの状態だと重くて使い物にならないのですが、コマの中のジャイロを抜く事で、かなり軽くなります。
マグネロボットマンは、やばい!
「マグネパワーズの全ての玩具には意味がある」ってのは、こういう事なんです。大量の関連玩具を全部集めた上、さらに二個目まで買う事で、ようやく本当の凄さが発揮されます。
さて、ロボットマンではありませんが、マグネロボットの「パーツ集」としても設計されたという、後期商品の「ジャイアントアクロイヤー」。
これはもちろん、昭和ミクロのジャイアントアクロイヤーを平成に復活させた商品ですが、モチーフは(今回も)いろんな所から引っ張れるだけのネタを引っ張って闇鍋的にブチ込み、グツグツ煮込んで天日干しにしたような、非常に複雑な機体です。
左より、アクロアルファ、アクロガンマ、アクロベータ。
昭和ジャイアントアクロイヤーのデザインは合体後では無く、単体のアクロアルファでフォローされており、さらにアルファの顔は昭和アーデンをモチーフにしています。
多脚戦車ガンマは昭和ミクロマンキットのビームトリプラー。股間ドリルタンクのベータは昭和ミクロロボット1。
合体後のGアクロは、肩の巨大ホイールやボトムアップな体型バランス、アニメでの「戦闘要塞」という位置付けなど、マグネモ玩具のゴーダムを意識していると思われます。
なんとこれで、マグパ内では「昭和人型マグネロボット」モチーフを、完全コンプリートしてしまいました。コワっ!!
イカレばかりのマグネパワーズ玩具ですが、ABCのオーバーマッドネスはブッチギリです。
さて、マグネロボットマンの名前ですが、エース、バロン、クロス、ディーン、エンデバーと、AからEまで続き、懸賞品の「ロボットマン・ゴースト」は「G」に相当しています。
つまり、ABCDEGとなり、なぜかFが抜けています。
※その他、トイざらす限定で「クリアーロボットマンエース」(みそどりる氏の記事を参照)が発売されましたが、こちらはあくまでも「A]。
異常なまでのコマか~いコダワリ、偏執的な法則性にガチガチに塗り固められたマグネパワーズで、こんなマヌケなミスは有り得ないんじゃないか?と、疑問に思ってしまうんですけど、私はなんとなく、Fは「ファイナルのF」ではなかったのかと思うのです。
「最後」を出す事を嫌ってFを欠番にしたのか、それとも「本当の最後」のために保留にしておいたのか。だってゴーストを「フラッシュ」にして、とりあえずFを埋めとく手だってあったわけじゃないですか。
個人的には、最後に出たトイザラス限定版の「スーパーロボットマン」。
これをして、中の人的には最終ロボットマン、「ロボットマン・ファイナル」の位置付けだったのかなぁ。という気がしています。
「ファイナル(最終)」の次に位置付けされる機体が「ゴースト(幽霊)」である事は、オチとして完璧すぎると言えるでしょう。
近年、海外ではコミックでマイクロノーツが復活し、ハズブロからは復刻玩具の発売がアナウンスされ、将来的にはアニメや映画といった形でのメディア展開や、玩具の日本上陸も予想されます。
遠く無い未来、「コンボイ司令官」が、すっかり「オプティマス・プライム」になってしまったように、どっからどう見てもロボットマンなオモチャが、日本でも「バイオトロン」として今後売られるようになるのかもしれません。
ですがやっぱり、「ファイナル」の後の、新しいロボットマンに、また会ってみたい。
そんな風に考える今日この頃です。
そういや、ガ・キーンもロボットマンになってたのであります。