マイクロノーツマッドネス「タカラSFランドレネゲイド」
さて、今年も今日で終了です。現在午後3時でありますが、大急ぎで年内の更新に間に合わせてみたいと思います。果たして!
今年は個人的に仕事に趣味にとダラダラした年だったのでありますが、最大の事件といえば、この本の刊行でしょう。
双葉社 タカラSFランドレボリューション 変身サイボーグの後継者たち
ボリュームと校正の点には少々の不満もあるのですが、内容については文句無く、様々な示唆に富む素晴らしい本でした。
ていうかですよ、私実はホビー関係の本って平成に入ってから一冊も買ったこと無いんです。そんな私が買っちゃったくらいですから、やはりこりゃ事件であります。
まず、この本ではダイアクロンの人気で再注目をされた「タカラSFランド」の概要を今一度俯瞰してみましょう。みたいな体裁が一応取られているんですけど、その実はとんでもないパンクでデストロイな本でして、従来一般的だったタカラSFランドの定義を玩具開発の歴史から再検証し、「テレビ無しのサイボーグ、ミクロマン、ダイアクロンがタカラSFランド」という従来の定義を破壊して、「テレビ有りの版権モノでもタカラ玩具の系譜」という、全く新しい価値観をブチ建ててしまったとんでもない本なのであります。
簡単に言えば、ボトムズ、ダグラム、勇者などのサンライズ有名アニメだろうが、円谷巨大ヒーロー特撮だろうが、鉄人、アトムといった超大御所マンガ家の超有名作品だろうが、タカラがオモチャを作った作品にはみんなタカラSFランドの血が流れているというわけ。
「そんなばかな」
と思うでしょうけど、要するに版権モノでも出る玩具の中には「タカラ玩具の血統」が受け継がれ続けてる事が玩具開発の視点から語られ、この本ではサイバーコップ、メタルジャック、グリッドマン等が、アニメや特撮番組の玩具であるにも関わらずタカラ玩具史の系譜の中に再配置されて語られています。
例えて言うとですね、80年代にアニメ放送された鉄腕アトム、いわゆる「二期アトム」。これはもちろんマンガの神様の代表作であり、タカラがアトムの内容に干渉してるなんていう話は聞いた事もありません。
しかし、タカラから出たオモチャの「メカブロック」を見れば、このアトムが変身サイボーグやアンドロイドAの発展形である事は一目瞭然です。
さらにタカラのアニメと玩具の開発を仕切っていた大魔王、沼元事業部長が元虫プロ社員であった事などから見ると、80年代以降の手塚アニメの製作には並々ならぬタカラの助力があった事も想像できます。90年代に三期となる「アストロボーイ」が放送された際もタカラがアトムをスポンサードし、玩具を出していたことから、玩具史的な側面では「アトムもタカラSFランドである」と強弁する事だって可能になるわけです。
もちろん「SFランドエボリューション」内でそんな具体的なトンデモ解釈を推奨しているわけではないのですが、少なくともこの本が示した価値観は、今までと全く違う世界を我々に見せてくれているという事なのです。
今までアニメ有り、オーダー元は米国ハズブロ社で造られているトランスフォーマーを「タカラSFランドだ」なんて言うヤツぁ誰ひとりいませんでしが、この本の上梓以降、トランスフォーマーだってレッキとしたタカラSFランドだと言い切っても構わない環境が出来たとも言えます。これは魅力的な新しい地平です。
この本はこういった画期的な価値観を示してくれただけに留まらず、商品化に至らずに没となった企画の資料や、初公開の貴重な情報、当時の担当者、タカラ重役らの貴重なインタビューなどがあり、さらには謎に包まれていたミクロマン・マグネパワーズの開発経緯についての資料や証言が多数収録されており、まさに俺得以外の何者でもありませんでした。
さて、メチャクチャに褒めましたので、そろそろ反抗してみたいと思います。

さて、私は以前からミクロマン・マグネパワーズは「当初日本版マイクロノーツだった」という珍説を繰り広げて来たのですが、この本ではその説の明確な否定こそありませんが、マグネパワーズの元企画やイメージソースとして、没企画となった「ダンガーンV」、「マグネイターズ」、準備企画の「ミクロマン1999」がマグネパワーズの元となったと証言されています。
そりゃそうです。キチガイの妄想みたいな私の珍説が公式絡みでマトモに検証されるはずもありませんし、そもそももし本当にそうだったとしても絶対に表に出ない話である事は百も承知です。
タカラ社員である高谷元基氏が語る、マグネパワーズ誕生の経緯とは、以下のような物でした。
1996年頃、社内のアイデア公募に高谷氏の提出した「マグネロボ復活企画案」が採用され、高谷氏は「超磁力ロボ マグネイターズ」の開発に着手。マグネロボットマンやマグネアニマルズの元になった試作原型がここで製作されています。
マグネイターズをアニメ化させるために企画を進めていた高谷氏でしたが、突如社長直轄の戦略的開発チームに企画ごと召集される事に!
そして異動になって早々「アーチミチミ、マグネロボにミクロマン要素を加えられんかネ?」
と言われ、ぶったまげる!!
高谷氏はチームで一年間商品仕様やデザインを揉み、「ミクロマン1999」という企画を98年初旬に男玩部門に引継ぎ、これが98年後半に「ミクロマン・マグネパワーズ」として世に出るようになったというわけです。
で、高谷氏はマグネパワーズ開始以降の商品展開には絡んでおりません。後期スーパーミクロマン期の展開は、売り上げ不調が明らかになってから、偉い人の天の声が降って行われたテコ入れであります。
で、「ミクロマン1999」のミクロマンチーム原案のスケッチも掲載されており、昆虫族、獣人族等、様々な種族が混在するチーム構成は、没企画の「ダンガーンV」(ビーストフォーマーの原型でもある)の影響なんですヨ~ン。とも語られています。
以上、マグパの元は「ミクロマン1999」、マグネロボットマンの元は「マグネイターズ」。マイクロノーツなんて影も形も出てきませんでした。
しかしですよ、それがですね。よくよく読み込んだ結果、私はますます自説に対する信を深める結果となってしまったのでアリマス。玩具ブログ界の狂犬の牙が光る!キチガイに敗北無し!
この画像をよ~くご覧頂きたい。
ミクロマン1999 ミクロマンチーム原案
右から鳥、虫、人、女、ロボットのチームであり、順にウォルト(鳥)、エジソン(虫)、アーサー(人)、イザム(女)、オーディーン(ロボ)と、マグネパワーズチームの原型となっているようにも見て取れます。が…
ダンガーンV?ご冗談。これ誰がどう見たってマイクロノーツ以外の何者でもございません。
マーベルコミックスのマイクロノーツチーム。
マイクロノーツオリジナルチーム
・キャプテン・ラン
マイクロノーツチームのリーダー。
玩具はマイクロノーツの"SPACE GLIDER"
日本のスーパーミクロマン・ダッシュウィング。
・プリンセス・マリオネット(マリ姫)
コミックオリジナルキャラクターのヒロインで、ランとは恋仲。
・アクロイヤー
アクロイヤー族の王。誇り高き正義の剣士。
玩具はマイクロノーツの"ACROYEAR"
日本のアクロイヤー2。
・バグ
昆虫族の戦士。アクロイヤーの友人。
玩具はマイクロノーツの"GALACTIC WARRIOR"
日本のスーパーミクロマン・ハンドバズーカ。
・バイオトロン
意志を持つロボット。
玩具はマイクロノーツの"BIOTRON"
日本のロボットマン
ミクロマン1999のキャラクター原案ではセンターの人型がリーダーっぽいのですが、マスクのデザイン形状から、恐らくこいつがマイクロノーツ・アクロイヤーで、イザムのアーメットデザインの原型となったキャラクターなのだと思われます。鳥型獣人は背中に展開式と思われる機械式の羽根(ダッシュウィング)が付いており、恐らくこいつがスペースグライダー。虫、ロボット、女子についてはもう、言わずもがなであります。
「ミクロマン1999」のデザイン原案は明らかにマイクロノーツチームのリメイクです。
これが「タカラ版マイクロノーツ」ではなく、あくまで「ミクロマン1999」だヨ。って言うんだったら、高谷氏も社内のAF(アクションフィギュア)部門で海外向け玩具の企画開発に携わっていた人なんですから、「いやぁ、海外のコミックなんかも参考にしたんですよネ」とサラっと言って構わないハズですが、ダンガーンVを喩えにして「内製のアイデア」であるという事をあくまでも強調しています。
「ダンガーンV」の影響も、ウソでは無いでしょう。けれどもそれはあくまでもデザイン上の一つのアイデア、方向性での話であって、企画の骨格、本質ではありません。
取材に対してのステートメントやその編集にはそりゃ様々な忖度が必要になるでしょうし、取材をする側、される側の双方に「言えない事」も「書けない事」もあるでしょう。しかしこんな図版を公開しちゃった時点でもう、これはね、アレですよ。そういう事ですよ。
さて、ミクロマン1999が進められていた「社長直轄プロジェクトチーム」というのも気になります。通常のアニメタイアップキャラクター玩具は男玩部門で進められており、特命班で進めるなんていうのはよっぽどですから、機密中の機密プロジェクトだった事が伺えます。
で、高谷氏が進めていたオリジナルのマグネロボに、ミクロマンを付加させてくれという依頼があったという事は、1996年当時には既に、タカラ社内で極秘のミクロマン復活プロジェクトが動いていたという事、新しいミクロマンにはマグネロボットとの共存が必要だったという事になります。つまり、その機密プロジェクトというのが「タカラ版マイクロノーツ」だったというのが、私の推理です。
証拠ですか?ありますよ。
特許庁の特許情報プラットフォームで検索をすると、こんな結果が出てきます。
タカラは「マイクロノーツ(ミクロノーツ)」の日本国内での商標を1996年に取得しており、タカラトミーとなった現在も保守しています。
時期的に高谷氏の新マグネモ計画が新ミクロマンと合流した時とも重なります。「ミクロマン1999」というのは、「タカラ版マイクロノーツ」が頓挫した際に方針転換された物です。
という、あくまで私の勝手な妄想で、タカラトミーの社員各位や「レボリューション」の編集者、執筆者各位にはくれぐれも関わりが無い情報なので、そのへんは厳重にオコトワリを申し上げておきます。絶対に問い合わせだの裏取りだのはなさらないように。あくまでキチガイのタワゴトですぞ。
さて、そういうわけでマグネパワーズ=マイクロノーツ説に関しては私の中では完全に決着が付きました。部屋のお片づけはサッパリですが心のお片づけは完了です。
マイクロノーツの映画化もようやく日程が決まったとの事ですので、いずれ「タカラトミーが造ったハズブロのマイクロノーツ玩具」が世間にもお目見えし、日本でも「タカラトミーのマイクロノーツ玩具」として売られるのでしょう。しかしやっぱり、新しい「ミクロマン玩具」を出して欲しいですよね。
新マイクロノーツが日本でどれほどの話題になるのか全くの未知数ではあります。タカラトミーさん、この際ですからマイクロノーツは「新マグネパワーズ」にしちゃいましょうよ。
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と、いうわけで、何とか年内に間に合い、今年のキチガイ収めとなりました。皆様、良いお年をお過ごし下さい。そして来年もよろしくお願いいたします。